Research Abstract |
グラム陰性嫌気性菌の細胞壁構成成分であるlipopolysaccharide(LPS)は多様な生物学的活性を有しており、口腔内の炎症においても重要な役割を果しているものと考えられている。一方、plasmin はkinin 産生に関与し、炎症の進行に深く関わっていることが知られている。本研究ではヒト歯肉線維芽細胞(Gin-1)にsubgingival plaque中より検出されるCampylobacter rectus(C.r.),Porphyromonas gingivalis(P.g.),P.endodontalis(P.e.),Prevotella loesheii(P.1.)のLPSを作用させ、Gin-1培養液中のplasmin,plasminogen activator(PA)活性及びPA inhibitor(PAI)量を測定した。 <方法>各菌体よりhot phenol法にてLPSを抽出し、confluence stageのGin-1にLPSを作用させ、培養液中のplasmin活性を合成基質にて、PA活性を合成基質及びzymographyにて、PAI量をELISA法にて測定した。更に、prekallikreinにGin-1培養液を作用させ、Gin-1培養液中のplasminがprekallikreinの活性化に与える影響を検索した。 <結果及び考察>Gin-1に抽出したLPSを作用させたところ、C.r.LPSが最もGin-1培養液中のplasmin活性を上昇させた。C.r.LPSによるGin-1培養液中のplasmin活性は、作用時間、作用濃度に応じて上昇した。また、Gin-1培養液中のPA活性はC.r.LPSにより有意に上昇した。PAのzymographyではGin-1培養液中のPA活性は50kDa付近に認められた。urokinase type PA(uPA)及びtissue type PA(tPA)抗体を用いた実験よりGin-1培養液中のPAはuPAであることが認められた。また、Gin-1培養液中のPAI量はC.r.LPSにより低下していた。更に、prekallikreinにGin-1培養液を作用させたところC.r.LPSを作用させた培養液は、controlに比べて有意にprekallikreinを活性化させた。以上の結果から、C.r.LPSは歯肉線維芽細胞のPA-plasmin系を活性化させることにより歯肉の炎症を進展させることが示唆された。
|