Research Abstract |
目的:ヒト正常乳歯,幼若永久歯の歯髄内有髄・無髄神経線維の数量,割合,タイプ,微細構造などを神経発達の立場から,形態学的に検討し,乳歯および幼若永久歯における知覚の特徴を解析することである。 材料並びに方法:咬合誘導のため要抜歯とされるヒト正常乳犬歯と幼若第一小臼歯を用いた.抜歯後,直ちに根端部1/4の歯髄を注意深く摘出した.その後,試料は通法によって,Epon812包埋した.次に,歯髄横断準超薄切片を作製し,1%toluidine blue染色を行い,光顕下330倍で全部位を撮影した.また,同一試料から超薄切片を作製し,TEMにより観察した.各一定倍率の光顕及び電顕写真を,コンピュータに入力し,画像解析シテム(NIH image 1.49)による有髄及び無髄神経線維の計測に用いた. 結果並びに考案:1)歯髄内神経線維数は,幼若第一小臼歯より乳犬歯のほうが遥かに多く認められ,幼若小臼歯では,萌出後根端部の形成につれて神経線維数が明らかに増加する傾向が認められた.2)有髄:無髄神経線維の割合は,平均乳犬歯では1:9.998であり,幼若小臼歯では1:6.607であった.3)有・無髄神経線維の平均直径,有髄神経線維のG値(軸索直径/線維直径)は,乳歯と幼若小臼歯の間に有意差はなかった.4)直径5mum以上の有髄神経線維は,それぞれ乳犬歯では24.621%,幼若小臼歯では35.339%に比率で観察された.5)TEMの観察により無髄神経軸索が多様な構造を呈していた.1),2),3)から,神経線維数特に有髄神経線維の占める割合は,歯牙における知覚的相違の一つの原因だと考えられる.4),5)から,ヒト歯髄内神経線維は,痛覚を司る外に,様々な機能を有することが示唆された.
|