Research Abstract |
薬剤の唾液への移行濃度を測定することによって、薬剤の有効性の指標となる血中濃度を推測することが可能であるかどうか、両者の相関性について、新規マクロライド系抗生物質クラリスロマイシンを用いて検討し、また、同剤について小児における歯科口腔領域の臨床的有効性について検討した。 研究方法:本実験に対して、承諾の得られた健康成人11名(男子8名、女子3名)に対し、クラリスロマイシン 200mgを投与後、経時的に血液と唾液を採取し、Bioassay法(paper disc法)にて各々の濃度を測定し、パーソナルコンピューターNEC 9801を使用し、一次吸収 one compartment modelによる薬動力学的パラメータを求め、血中および唾液中濃度濃度曲線を作成した。次に3歳11カ月から15歳5カ月までの小児で、感染予防症例13名と、歯性感染症例8名、合計21名の患児に対し、同剤を適量投与し、臨床的有効性を検討し、小手術症例に関しては、術前に1回量を内服してもらい、術中、手術創内に貯留した血液および唾液を同時に採取し、濃度を測定した。 結果:成人の平均値の血中および唾液中濃度曲線のパラメータでは、血液は、Tmax2.02h,Cmax1.34mug/ml、唾液は、Tmax2.32h,Cmax1.44mug/mlと、Tmax,Cmaxとも、唾液の方が、血液よりやや高い値を示したが、両者間には、有意な差は認められなかった。また唾液中濃度は、血中濃度とほぼ類似した体内動態をとり、これより血中濃度を推測することが可能であると同時に、小児においても、同様なことがいえると考えられた。小児では、小手術症例すべてが、本剤のMIC 0.39mug/ml以上の濃度を示し、唾液中、血中濃度とも同程度の値を示した。 臨床的有効性については、歯性感染症例では87.5%、感染予防症例では、92.3%と高い有効率を示した。
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