Research Abstract |
(研究目的) Down症者の顎顔面をモアレトポグラフィー法を用い,表面積と体積から特徴をパターン化した. (対象と方法) Gバンド染色体分析を実施し,21_-トリソミ-の男性15名,女性15名の計30名を選出した.対照群として正常者男女各15名を選定し,顔面のモアレ写真上から表面積,体積の他に,中顔面の特徴を検討するためIndexを考案した.a)Moire Down Brow Index(MDBI):内眼角間距離と鼻根点から鼻尖点までの距離から,相対的な両眼隔離の数値化した.b)Moire Down Nasion Index(MDNI):鼻根点から鼻尖点までの距離と鼻根点から鼻尖点までの高さに,鼻尖水平線上の鼻翼間距離を乗じることにより鼻の近似的体積を求めた.c)Moire Down Maxillary Index(MDMI):内眼角点を結んだ線と、顔面正中線との交点から鼻下点までの距離と左内眼角点から鼻下点までの高さから,上顎相当部の前下方への成長を方向化し,さらに成長量を求めた. 健常者と比較してDown症者の顔貌の特徴として以下の結論が得られた. (結論) 1)表面積,体積を算出した結果,顔貌の特徴は中顔面にあり,中顔面は劣成長で起伏が少ない平坦な顔貌を示した.2)上顎骨相当部は前方,下方共に劣成長を示した.3)内眼角間距離は平均33.82mmと健常者(平均35.03mm)よりも小さく,両眼隔離は認められなかった.4)MDBI値からDown症者の見かけ上の両眼隔離は鼻の長さが重要な要因であった.5)MDNI値からDown症者の近似的な鼻の大きさは,健常者の約75%で低かった.6)MDMI値からDown症者の上顎骨相当部の成長量は健常者の約80%であった.7)上斜眼裂の割合はDown症者平均30%と健常者(平均6.7%)より高く示された.8)内眼角贅皮の割合はDown症者平均70%と健常者(平均30.0%)より高く示された. モアレトポグラフィー法を用いた表面積,体積,MDBI,MDNI,MDMIは,今後Down症児の顔貌の成長発育,形態を検討する際の有力な指標になるとともに,診断法の確定していない他の症候群の診断に応用できる.
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