Research Abstract |
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、リン脂質生合成系の中心的酵素の一つとして研究されてきたが、近年、基質のジアシルグリセロールと反応産物のホスファチジン酸の両者とも種々の生理活性を持つことから、細胞刺激情報伝達系においてもその役割が注目されている。他の刺激情報伝達系の酵素と同様にDGKには多数のアイソザイム(未精製を含め8種以上)が存在することが示唆されている。しかし、実際に幾つのアイソザイムが存在するのか、どの様にそれらが役割を分担しているのか、また、いかなる性質や一次構造の差異があるかなどは殆ど明らかになっていない。そこで、すでに一次構造を明らかにしたDGKalpha,betaに共通な配列を基に他の(未知なものを含め)全てのアイソザイムのクローニングを目標に本研究を計画した。その結果、新たにヒトcDNAライブラリーより2種のアイソザイム(DGKgamma,DGKdelta)のクローニングに成功した。1.DGKgammaは791アミノ酸から成り(計算分子量=88,895)、C1、C2(EFハンド)、C3(亜鉛フィンガー)及びC4ドメインを持ちDGKalpha,betaと共通の基本骨格を有することが明らかになった。アミノ酸の同一性はブタDGKalphaとラットDGKbetaに対してそれぞれ52%と62%と高い価を示した。本アイソザイムはDGKalpha,betaとは異なりCa^<2+>非依存性に活性化され、網膜に多量に発現していることが見出された。更に、幾つかの細胞では25アミノ酸が欠失した不活性型の酵素をコードするmRNAが検出され、その欠失の機構や生理的な意義に興味が持たれる[投稿中]。2.DGKdelta(1169アミノ酸、約130kDa)はC3,4ドメインのみを持ち、DGKalpha,beta,gammaとは異なる基本骨格を有していた。また、そのC末端はレセプター型のチロシンキナーゼの一種であるEPHファミリーのそれと高い相同性を示した。本アイソザイムのmRNAは骨格筋に多く発現していた。現在、動物細胞で発現させ酵素学的性質を検討中である。
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