Research Abstract |
エンドトキシンの動物細胞に及ぼす障害機構を検討するため、生体全体の複雑な間接的影響を除外した系、すなわち培養肝細胞を用いた。エンドトキシンは直接肝細胞に障害性を示さなかった。エンドトキシン刺激したマクロファージ細胞の培養上清は培養肝細胞に対して細胞障害の指標となるLDHの放出を誘導した。またこの現象は腫瘍壊死因子(TNF)の作用でも認められ、また腫瘍壊死因子の受容体の欠損動物を用いた他研究者の研究(Cell(1993)73,457-467)から、in vivoにおけるエンドトキシンによる肝障害は腫瘍壊死因子の受容体を介した作用によるものであることが明らかとなってきた。エンドトキシンがマクロファージ系の細胞に作用して産生されるサイトカイン(IL-1,IL-6,TNF)を作用させるとTNFのみが処理後早期に障害の要因の一つである活性酸素を調節するタンパク質mnSOD(マンガナーゼスーパーオキシドジスムターゼ)を顕著に誘導した。mnSODはTNF処理後4時間目に約5倍上昇し、12時間目に20倍上昇した。また四塩化炭素や抗Fas抗体も肝障害性を示したが、mnSODは2倍程度上昇しただけであった。また障害機構の他の要因となるプロテアーゼの阻害因子であるPAI-2(プラスミノーゲンアクチベータ-インヒビタータイプ2)について検討すると、TNF処理により未処理の10倍以上増加した。またTNF処理後の肝細胞より核を分離してin vitroでリン酸化すると、分子量約34-kDaタンパク質のリン酸化が亢進することも見いだされ、これは処理後十数時間後に認められ30時間後もほとんど一定であった。TNFによる34-kDaタンパク質のリン酸化機構を推定すると共に、mnSOD,PAI-2および他の急性期タンパク質との関連を検討している。
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