Research Abstract |
ラット大動脈の収縮特性に及ぼす長期間の身体運動(TR)の影響を内皮細胞との関連性から検討した.実験動物としてWistar系雄ラットを用い、TRは9週間のトレッドミル走行を実施した.TR終了後,ラットを屠殺し胸部大動脈を摘出後,種々の薬物に対する収縮特性を検討した.ノルエピネフリンによる収縮において,内皮細胞存在下でTR群の濃度反応曲線は対照群と比較し有意に右側にシフトした(50%有効濃度(ED_<50>),対照群;9.5nM,TR群;30nM).内皮細胞非存在下においても同様の現象が観察されたが,その差は小さくなった(対照群;ED_<50>=4.2nM,TR群;ED_<50>=9.7nM).外液Ca^<2+>のノルエピネフリン収縮に及ぼす効果にTRの影響は認められなかった.アンギオテンシンIIによる収縮は内皮細胞存在下でTRラットの濃度反応曲線は対照ラットと比較し有意に右側にシフトした(対照群;ED_<50>=2.1nM,TR群;ED_<50>=5.6nM).内皮細胞非存在下においても同様の現象が観察された(対照群;ED_<50>=2.0nM,TR群;ED_<50>=6.6nM).アセチルコリンによる弛緩やカリウム拘縮はTRによる影響を受けなかった.さらに急性の運動負荷について検討した.運動負荷後,対照群のノルエピネフリン収縮は内皮細胞の有無に関わらず濃度反応曲線は有意に右側にシフトした.TR群においても同様の現象が観察されたが,濃度反応曲線の右側へのシフトが小さく,結果的に運動負荷直後に測定したノルエピネフリン収縮は対照群とTR群で有意な差が認められなかった.また,運動負荷後,対照群のアンギオテンシンII収縮は内皮細胞の有無に関わらず濃度反応曲線は有意に右側にシフトした.一方,TR群のアンギオテンシンII収縮は急性の運動負荷の影響は認められなかった.
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