Research Abstract |
運動も、発育期では持久的トレーニング(TR)やアナボリックTRともに、質的・量的な違いはあるものの、骨・筋の成長促進を惹起するが、これに対する全身性因子としての血中GH-IGF-I系の関与の仕方や程度は不明のままである。私どもは、上記のTRの後、安静時の血中IGF-I水準は変化しないが血中GH分泌量が増加すること。また、一過性の運動負荷直後では血中IGF-I濃度が有意に減少し、また、それがTR強度に依存して大きいことを報告した。これは、血中のIGF-Iの絶対量が増加せずとも、組織に積極的に取り込まれ作用する可能性を示唆している。最近、IGF-Iは血中では遊離状態と、特異的な結合蛋白(BP)との複合体という2様式で存在し、さらに後者のBPは大分子(150-KD)から低分子(25-KD)まで6種類に分類されることが報告されている。本研究は、運動TRによる骨・筋組織の肥大において、血中のIGF-I-BPの増加の可能性を検証することを目的とした。 生後3週齢の雄ラットについて、動物用トレッドミルを用い、30m/min(30T)および10m/min(10T)の速度で30分間/日、5日/週で3ヶ月間の走行トレーニング(TR)を負荷した。対照群としては、何も運動負荷を与えないものとした。TR終了後、速度漸増法的走行テストを行わせ、予め留置した右心房カテーテルから、安静時、ならびに運動前・中・後に採血を行い、血中乳酸濃度を測定した。残りの血液は血漿分離の後、-80℃で凍結保存し血中IGF-IならびにIGF-I-BP定量に供した。IGF-I-BPは低分子のIGF-I-BP-1(血糖依存型),2(絶食やGH欠乏症で増加),4(老人性骨粗鬆症で増加)および高分子のIGF-I-BP-3(IGF-Iの貯蔵庫として働く)の4種類についてwestern ligad blotting法(肥塚ら、1992)を用いて検討した。その結果、運動TRによる下腿筋(ヒラメ筋、足底筋)の有意な肥大が認められ、また、速度漸増的走行テストにおける血中乳酸濃度も有意な低下を示し運動適応が再確認された。また、血中IGF-I濃度は不変であった。血中のIGF-I-BPは、IGF-I-BP-1,2,3,4のいずれにおいても有意な増加は認められなかった。このことは、発育期の運動適応において血中IGF-I、ならびに、血中IGF-I-BPの直接的貢献は少ないことを示唆している。現在、この追試をするとともに、今度は筋組織中のIGF-I-BPの変化についても併せて検討している。
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