Research Abstract |
運動と食事・栄養に関する総合的な指導のための基礎的研究として,分泌刺激となる飼料負荷後の膵消化酵素活性値変動について,ラットの膵組織中の消化酵素(アミラーゼ)の活性値を持久的トレーニングの有無の両群で比較し、運動習慣が摂食後の消化機能にいかなる影響をもたらすか検討した。 実験動物にはSPF Wistar系雄性ラットを用い,個別ケージ中で固形飼料及び水道水の自由摂取にて5週齢より飼育を開始,1週間の予備飼育後,トレーニング(T)群とコントロール(C)群にグループ分けし,T群には小動物用トレッドミルを用いて週に4日,毎分35mのスピードで1回60分間のランニングを実施した。トレーニングを6週間継続した11週齢中に絶食24時間経過後に液状の混合実験食を規程量だけ胃内投与し,投与後,30,60,90,120,180分にペントバルビタール麻酔下で開腹し,下大静脈より採血した後全膵組織を摘出し,各種の測定を実施した。 C群の食刺激後の膵組織アミラーゼ活性値は,刺激30分後に一旦増加し,その後徐々に減少して刺激90分後には最低値を示し,その値は刺激前値に比較して有意に低値で,その後前値に向かって増加傾向に転ずる陰性相が認められた。一方,T群の変動は,30分後の増加が認められず,早期の減少傾向が観察され,60分後に最低値を示し,その後増加傾向に転ずる変動で,60,90分後の値は前値に比較して有意に低値であった。膵酵素の食刺激後の減少は,分泌に膵での合成が追いつかない一過性の現象であると考えられる。T群で早期に認められ,その後の回復も早く観察されていることから,膵酵素の分泌や合成がC群に比較して速度が早いのではないかと推察された。以上の結果より,運動習慣は摂食後の膵での消化酵素に関連して消化機能に良好な影響をもたらすのではないかと考えられる。
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