Research Abstract |
環境認知の分野で従来から研究例の少ない地方都市における地域のイメージが,どのような特徴を示し,また如何なる要因よって形成されているのかについて,下記のような幾つかの新たな知見が得られた.1.調査の対象とした山梨県甲府市の地域の評価は,JR中央本線の北側において高く,これより北及び東にむかうにつれて低くなるという一般傾向があった.調査対象とした28の単位地区のうち,20の地区において,具体的にその地区内に存在する事象を提示できた者,すなわちその地区をよく知っていると考えられる者の方が評価は高かった.ただし,山間部,中心部及び東部の8地区においてはその逆の傾向がみられた.2.地区の評価を高める要因として,中世の武田家にまつわる史跡名勝(北部),ショッピングセンターなどの大規模小売り店舗(北部,西部),大学や学生街など文教施設に関わるもの(北部,東部),大規模な運動施設(北部,南部),市民会館,美術館など大規模な公共施設(東部,西部)が挙げられ,逆に過去の刑務所,赤線地帯など(東部),不便さ(北部),傾斜地(北西部)は評価を低める要因であることが明らかになった.3.評価の個人差が大きい地区及びこれが小さい地区は,いづれも南部にみられた.個人差が大きい地区は,開発途上で景観変化が激しいために,過去と現代のどてらの景観に関する事象を提示したかで評価が大きく異なることが明らかになった.4.回答者の年齢,性別,職業などよりも市内における居住年数の違いが,評価に大きな影響を与えることが明らかになった. 調査,検討の終了した現在は,研究の当初の目的の通り,歴史的環境が評価へ与える影響が大きいことが明らかになった東部及び南部地区において,評価を決定するメカニズムについてのモデル構築の検討を進めている.
|