Research Abstract |
説明を理解する場合,単にその内容を記憶するだけではなく,既有知識との関係付けを通してその内容が何を意味するのかを解釈することが重要となる.このような過程は,説明内容を既有知識に同化させ,自らの知識を構造化することと見ることができる.本研究では,このような知識の構造化を説明理解と捉え、学習者による構造化に対して認知的負荷をかけるような説明を提案した.また、そのような説明を計算機が生成するためのメカニズムを設計・開発した.意識的に学習者の理解過程に対して負荷を与える場合,学習者による知識の構造化能力を見積もって,与えるべき負荷の大きさを制御することが最重要課題となる.本研究では、情報処理用語および用語間の関係に関する知識構造を対象として,用語に関する説明から人間がどの程度知識を構造化できるかを予測するモデル(説明効果モデルと呼ぶ.)を作成した.本研究で開発した説明メカニズムは,この説明効果モデルに基づいて学習者の能力に応じた認知的負荷を付与する説明の生成を可能にしている.以上の成果は,すでに電子情報通信学会英文誌に掲載されている. さらに,説明を理解する際に認知的負荷を伴わせた場合の効果を測定する実験を行った.負荷を伴った場合,理解の結果得られる知識構造の定着度が高まることが予測される.本実験では,このことを確かめるために,被験者を,負荷を与えるグループと与えないグループに分け,各グループに対して知識の構造化を行わせた.一定時間後に,その知識構造に関する想起テストを行った結果,負荷を与えたグループの成績が与えていなかったグループの成績を大きく上回った.このことから,認知的負荷を与える説明の効果が確かめられた.この実験については,電子情報通信学会および人工知能学会において発表を予定しいる.
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