Research Abstract |
まず,プロジェクトデータの一覧表,及び,プロジェクト開始時点からのデータの時間変化を示すグラフを開発者が使用する端末上に表示するツールを作成し,プロジェクトデータ計測システムGINGERに組み込んだ.端末上への図表の表示には,X-Window上の図表描画ツールgnuplotを利用している.作成した表示ツールの起動は,端末上から開発者自身が行うことが出来る.また,表示するデータの選択等は,簡単なマウス操作によって行うことが出来る.従って,開発者は,参照したいプロジェクトデータをいつでも簡単に参照することができる. 次に,大阪大学基礎工学部情報工学科の学部生80名を対象とした学生実験においてGINGERシステムを適用して,開発者による情報の利用状況のデータ,及び,ソフトウェアの生産性や品質の変化に関するデータを収集した.実験の結果,開発者(学生)の多くは,自らが開発中のプログラムのサイズ(行数)を頻繁に参照しており,逆に,プログラムのコンパイル回数や実行回数といった作業量を表すデータは参照していないことが分かった. プロジェクト制御に有効な情報を明らかにするため,データの参照回数の多少によって,開発者をグループに分け,プログラム完成までに要した作業時間をグループ間で比較した.その結果,プログラムサイズ,及び,プログラム変更量(デバッグ等の目的で修正,削除されたプログラムの行数)の情報を頻繁に参照したグループの作業時間の平均値は,それらをほとんど参照しなかったグループの作業時間の平均値よりも小さく,開発者間でのばらつき(分散)も小さいことがわかった. 以上のように,プロジェクトデータを開発者にオンラインでフィードバックすることが,プロジェクト制御を効率良く行う手法として有効であることを明らかにすることが出来た.
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