Research Abstract |
本研究の目的は,信念を扱う二つの方法,すなわち,様相論理に基づく形式的方法と測度に基づく数値的方法(Dempster-Shafer理論など)の理論的関係を探究することであった.具体的には,次の3ステップから構成された:(1)証拠の蓄積による信念形成を論理的枠組の中に定式化する,(2)信念から知識を獲得するための銃剣の探究,(3)文献検索を題材とするプロトタイプシステムを計算機上で実現する.以下,順に各点の成果を報告する. 第1の点については,証拠の型を矛盾性および不確定性という二つの観点から5つの型に分類し,各型に対応する信念状態の性質を導いた.その結果,2値的な文およびあいまいな文が未知の状態から既知の状態へ確定する過程を証拠の観点か定式化できた.第2の点については,信念が知識としての整合性を持つためにふさわしい条件を様相論理の観点から導き,そのために必要かつ十分な証拠の性質を求めた.その結果,知識になるためにはどのような証拠を獲得すればよいか逆算できることが分かり,一種のプランニング能力を獲得した.理論面では更に,以前の理論では扱っていなかった証拠から導かれる測度の中間の値に対応する信念演算子を定義し,健全かつ完全な論理体系を同定した.第3の点については,文献検索モデルを可能世界意味論によって再構成し,前述の信念形成モデルを適用した結果,信念検索モデルの枠組を得た.これは通常のブール検索やファジィ検索のモデルを特別な場合として包含する.更に,ベクトル検索モデルを論理的に解釈することも可能となった.このモデルに基づくプロトタイプシステムをパソコン上に構築した.
|