Research Abstract |
本研究はいわゆるPAC学習モデルに基づき,環境が変化していく状況のもとでの学習,すなわち,適応の論理的にモデルを確立し,適応アルゴリズムの性質を解明しようとするものである.適応アルゴリズムは,例題を1個ずつ入力する度に仮説を更新していく,いわゆるインクリメンタルな学習過程としてモデル化することができると考えられる.そこで,インクリメンタルな学習による概念形成過程の仕組みを,学習アルゴリズムの振舞いそのものに立ち入って解明しようとしてきた. まず,インクリメンタルな学習過程の重要な戦略として,例題の中に反例が生じない間はそれまでの仮説を更新しないという保存性の概念や,例題の数が増すに従って仮説の精度が増大するという単調性の概念に注目し,そのような性質を持つ学習アルゴリズムの概念形成過程を調べた.その結果,ある自然な条件のもとで,保存的,あるいは単調な学習アルゴリズムが出力する仮説は,与えられた例題系統の情報がある意味で圧縮された表現形式となっていることを示した.そのような仮説は,学習対象である概念の本質的な情報をよく捉えているとみることができる. また,単調で,かつ,常に目標概念に含まれる仮説を出力する,片側誤り学習アルゴリズムについて,学習に必要な例題数の上界を,新しく切辺集合(pargicle set)の概念を導入して評価した.この一般的に必要例題の上界を,目標関数のクラスが,n次元ユークリッド空間のn次元直方体からなるクラスの場合に適用して,これまで知られている上界を改良する上界を導くとともに,この上界が,定数の違いを無視すると下界に一致することをしめした. これらの結果は,インクリメンタルな学習アルゴリズムが,質の高い仮説を効率よく出力できることを示している.しかし,このアルゴリズムの適応の能力については,まだ解明されていない.今後は,本研究で示したアルゴリズムが,環境の変化に対してどの程度robustであるかを調べるとともに,適応可能性の妥当な定義を与える予定である.
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