Research Abstract |
本研究の目的は,火山噴火に伴い発生する津波(以下火山性津波)について,波源となる多様な火山現象をパラメータ化し,これを初期条件として,火山学的,流体力学的に意味のある火山性津波のシミュレーション手順を確立することである.火山性津波の場合,波源としては山体崩壊物質や火砕流の水域への流入,爆発や急激なカルデラ崩壊などが考えられ,単純な海面変位では表現できない.ここでは,流入や海面変位が残海で急激に発生する際の波源モデルを構築,流入モデルについては体積,方向,速度,範囲を初記パラメータとして津波数値計算を実施した.1640年の北海道駒ケ岳噴火に伴う津波の計算結果から,津波は室蘭周辺までは約20分で,また内浦湾沿岸には約40分で到達することが確認された.また,波高については,それぞれの入力パラメータの寄与が調べられ,特に流入体積や流入速度の波高に対するが寄与が大きいことが示された.すなわち,実際に波高分布のデータが得られれば,それを基に波源のパラメータをインバージョンにより求めることが可能であろう.そこで,実際にこの歴史津波に関する波高データを得る目的で,内浦湾沿岸の地層を調べ,津波により海岸の砂が打ち上げられて堆積している層(津波堆積物)を探した.その結果,少なくとも4地点において津波堆積物と思われる層を確認し,津波波高を推測することができた.津波波高は有珠善光寺近くでは古文書の記載と矛盾せず,また波高分布のパターンもシミュレーション結果と調和的といえる.なお,1993年7月12日に発生した北海道南西沖地震の直後に,津波によって運ばれた堆積物の現地調査を実施,(1)実際に海岸の砂を主成分とした津波堆積物が陸上に残りうること,(2)堆積物分布から波高分布を推測可能であること,(3)他の堆積物(砂丘起源等)との区別が可能であること,を確認した.
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