Research Abstract |
三重県内で資源管理型漁業を行っている漁村をいくつか選んで沿岸漁業者による自然環境保全システムとの観点からヒアリング調査をいくつか実施した。伊勢湾内での漁業種類としては採貝が主流になりつつあるのでそれを中心に調査を行った。二枚貝は移動性に乏しく,単一の漁業地区内での管理がしやすい水産生物である。最も主要なアサリ漁に着いてみても,(1)簡単な道具での手掘り,(2)ジョレンを手で扱って掘る,(3)腰につけたジョレンを用いて曳く,(4)一般の貝桁網を船で曳く,(5)砂の抵抗を少なくするための水流ポンプ付きの桁網を船で曳く,等の様々な漁法によって漁獲が行われている。前述の漁法は後の方ほど物的な生産効率は高いが貝が傷みやすく,価格が安くなりがちという特色を持っている。 地区ごとの漁業管理として,漁法,操業日,操業時間,一日あたり漁獲量,の制限がそれぞれ行われているが,その程度や遵守の度合いは地区により異なる。また,地区によっては操業時間のみを規制して一日あたり漁獲量には制限を設けず,体力や漁場選択の技能による差を生かした管理が行われている。総じて管理がうまく行っている地域では個別漁業者の選択を生かした経営が可能となるような管理システムが形成されていることが示唆された。また,管理の程度は当該漁業種類への経営体の依存度にも影響されていた。
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