Research Abstract |
本研究の研究実施計画に従い,以下のことを行い,それぞれに成果を得た.(1)パソコンを用いた光刺激/データ計測装置の作成,(2)コイ網膜神経細胞による電気生理・薬理的実験,(3)網膜神経細胞回路網の計算機によるシミュレーション. (1)本補助金で購入したパーソナルルコンピュータを用いて,光刺激装置,及びデータ計測装置を作成した.本刺激装置により,さまざまな形状・色を持つ光刺激を柔軟に生成できるようになった.また自動データ計測装置により,従来よりきめ細かい解析が可能になった. (2)本研究対象である,視細胞と水平細胞間の可塑的シナプスは,波長に応じて水平細胞の受容野を調節する働きがあり,また暗順応によりその働きが消失することがわかっている.暗順応によって受容野の波長依存性のなくなった状態でSodium Nitroprusside(SNP)を投与したところ、受容野の波長依存性が現れた,すなわちSNPは明順応と同じ効果を持つことがわかつた.また入力抵抗など,その他の順応によって生じる現象に対してもSNPは同様の効果があった.このことは,近年中枢系で注目されているNOシステムがこのシナプスでも働いている可能性を示す,重要な結果である. (3)網膜神経回路網の計算機モデルを作り,シミュレーションによって本シナプスの働きを調べた.このモデルにより,このシナプスが起こす現象の定性的な再現はできた.しかしまだ定量的モデルまでは至っていない. 今後は開発したシステムを用いて,この可塑性シナプスの機能的意味を明らかにすると共に,定量的のその機能を説明しうるモデルの作成が課題となる.
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