Research Abstract |
1.開発を行ってきたモータ駆動補助人工心臓を羊2頭(体重81.5kg & 91kg)に埋め込み急性動物実験を行い,モータ駆動補助人工心臓の解剖学的適合性と,人工心臓駆動による発熱と周囲組織温度の変化について検討した。 解剖学的には,2例とも左心房-下降大動脈間にモータ駆動補助人工心臓を装着し,腹部皮下に作った空間に補助人工心臓を埋め込み駆動できることを確認した。 温度上昇に関しては,熱伝導率の低い皮下脂肪中に埋め込こんで駆動した場合,人工心臓アクチュエータの損失5.2Wattsに対し,アクチュエータ表面温度41℃,アクチュエータに近接した脂肪組織で39.5℃であった.また,皮下脂肪と皮膚を剥離して作った空間に埋め込んだ場合は,皮膚血流の増加に伴う冷却作用により,アクチュエータの損失5.4Wattsに対し,アクチュエータ表面温度は39.2℃となった.2例の実験結果より,モータ駆動補助人工心臓の発熱による周囲組織温度の上昇は,生体組織に悪影響を及ぼすと報告されている42℃以下であり,生体に対し安全圏内であることを確認した. 2.上記の皮下脂肪中にモータ駆動補助人工心臓を埋め込み駆動した急性動物実験をモデル化し,人工心臓周囲生体組織中の温度分布を有限要素法による熱伝導解析により算出した(節点数3660,要素数2614).その結果,1)血液ポンプ内の血液による放熱効果が少なく,大部分の熱はアクチュエータ表面から体表面方向に放熱されること,2)アクチュエータ表面に局所的に42℃以上のheat spotの存在が示唆されたこと,3)アクチュエータの損失が7Watts以上になるとアクチュエータ表面温度が42℃以上になる可能性があること,の以上3点が明かとなり,今後のモータ駆動補助人工心臓の改良を進める上で有益な情報を取得することができた.
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