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¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1993: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
低湿地の貯蔵穴の機能を考える上で,堅果類に対する流水作用の実験を行った結果,最大の効果は長期間の鮮度保存(「生貯蔵」)にある可能性が高くなった。乾燥保存のものは春〜夏に果肉部が急速に硬化し,夏を越すものは皆無であった。流水漬けのものは,アクの成分である含有フェノール値も含め,変化は認められず,安定した状態を保った。このことはアク抜き効果が流水だけでは不可能であることも示す。しかし,流水漬けのものも秋には果肉部が急速に軟化する状態が生じており,採集時の状態を保つ生貯蔵は約1年間が限界であり,数年にわたる救荒食としての蓄えとは考えにくい。また,乾燥保存でも春までは生貯蔵状態を保つことから,貯蔵穴の堅果類の利用の中心は晩春〜秋(次年の収穫時まで)にあり,冬の期間の短期的保存というよりは,年間食料源となっていた可能性が高い。貯蔵穴の平均的容量から推し量った堅果類の保存量の数値も矛盾はない。また,虫殺しにも大変有効であったが,その効果は短期間の水漬けで充分で,貯蔵穴の本質的な必要性とは言えないだろう。 西日本では縄文時代の低湿地の貯蔵穴の報告例は,南〜中九州の一部を除くと,各地域で中期末〜後期にその出現が求められ,晩期に続く。この時期は遺跡数が沖積部に進出しつつ,急激に増加する時期に合致し,遺物の面からも,様々な自然科学的分析からも農耕の問題が論じられている。貯蔵穴出土の種子の検討では栽培種・雑草植物などが高頻度で出土していることから周辺部に耕地の広がりが想定される。何らかの沖積地における農耕の広がりを裏付ける傍証になろう。沖積部への新たな進出は沖積部と結びついた農耕への遺存度を相対的には強めていくわけで,こうしたやや不安定な経済活動を支える経済的基盤として貯蔵穴の年間食料の確保が意味をもつと考える。東日本と西日本の間の貯蔵穴の差を,こうした生産活動と考え合わせて検討して行きたい。
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