Research Abstract |
本研究では、堆積物中の有機化合物をアルカリ酸化銅分解法により解析し,中でも海洋起源有機物と考えられるポリヒドロキシC18カルボン酸類を海洋起源有機物の生物指標化合物として用いる方法の確立を目指している。現在解析途中であるが,これまでに以下のことが明らかになった。 海洋起源のものと考えられるポリヒドロキシC18カルボン酸類には、11,18-ジヒドロキシC18モノカルボン酸(飽和及び1不飽和2種)と7,11,18-トリヒドロキシC18モノカルボン酸の4種類あることが,大槌湾口から日本海溝にいたる堆積物(10地点)で確認された。しかしながら,大槌湾内堆積物(8地点)および東京湾内堆積物や東京湾口堆積物(以上12地点),また東京湾口におけるセジメントトラップ資料(沈降粒子:水深65-200mの17試料)では,11,18-ジヒドロキシC18モノカルボン酸(飽和)のみ見いだされた。一方,陸上の湖沼堆積物(琵琶湖,榛名湖,バイカル湖,木崎湖)や河川堆積物(大槌川,小槌川,多摩川)では,これらの化合物は全く見いだされなかった。したがって,ポリヒドロキシC18カルボン酸類は,明らかに海洋生物起源のものであることがわかった。 もっとも主要な11,18-ジヒドロキシC18モノカルボン酸(飽和)の量的な分布をみると,上記試料の中では湾内堆積物や沈降粒子で0.2-7mug/g,沿岸域堆積物で6-26mug/g,外洋域堆積物で7-12mug/gと,沿岸域堆積物で多いことがわかった。 現在、日本海堆積物やその他の海洋堆積物,また海藻類(10種程度)でこれらの化合物の存在確認,および他の分析値(ステロール類を中心として)と相関関係を調査している。
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