Research Abstract |
従来までの研究で,比較的短期間の学習経験によって視覚情報処理のラテラリティが変化することが明らかとなっている(Endo et al.,1982:吉崎,1988:Yoshizaki,1990).本年度の研究では,このようなラテラリティの学習による変化が実際の学習場面で生じることを確認する.また同時に,昨年度までの科研費研究で検討されてきた半球のメタコントロールをとらえるパラダイムを用いて,学習過程でのメタコントロールを担う半球の変化についても検討を加える.実際の習得状況として,留学生が日本語を習得していく過程が取り上げられた. 実験1では,まず日本人大学生17名(右利き)を対象に平仮名1文字対のマッチング課題のラテラリティ並びに,メタコントロールについて検討した.まず,両視野提示条件を除き,ラテラリティの観点から分析を加えた.正答に要した反応時間を3要因分散分析(提示時間(20ms vs 120ms),反応のタイプ(same/different),提示視野(左視野/右視野)にかけたところ,2次の交互作用が見られた.この交互作用は,提示時間が短い条件(20ms)では,反応タイプと提示視野の単純交互作用が見られるのに対して,提示時間が長い条件(120ms)ではそのような単純交互作用が見られないことの反映だと推察された.つまり、20ms提示条件時には,same反応で左視野優位性,different反応で右視野優位性を示したのが,120ms提示条件時ではsame,different反応とも弱い右視野優位性を示したのであった. 両視野提示条件の成績から,半球のメタコントロールについて検討した結果,20ms提示条件時において右半球がメタコントロールを担当していることが推察された. 実験2では,来日して1年以内で日本語を学習している留学生を対象に,実験1と同じ課題が実施された.対象者は6名であった.実験1と同様の分析を行ったところ,2次の交互作用は見られず,実験1の結果とは大きく異なるものであった. 実験2は,またpilot studyの段階ではあるが,日本語学習初期の仮名文字認知のラテラリティやタメコントロールは,母国語として処理する日本人のそれとは異なることが予想された.
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