Research Abstract |
ウサギの靭帯や腱に作用する負荷を定量的に増大させ,その力学的性質や断面積の変化を詳細に調べ,力学的環境の変化に対する生体軟組織の適応制御の機構について検討した. 1.ウサギの右膝において,前十字靭帯の幅が1/2になるように外側あるいは内側の線維束を切除する手術を施した.これにより,前十字靭帯を内側線維束だけにしたMB群では1.3〜1.5倍,外側線維束だけにしたLB群では4〜8倍の負荷の増大がみられてた.ウサギを術後ケージ内で3,6週間飼育した後屠殺し,大腿骨-前十字靭帯-脛骨複合体を取り出し、引張試験を行った.MB群では,弾性係数や断面積に有意な変化は現れなかった.これに対して,LB群では,6週間後には弾性係数は正常群の焼く60%に,断面積は正常群の81%に減少した. 2.ウサギの膝蓋腱に油圧サーボアクチュエータを用いて体外から強制的に繰り返し負荷を作用させた.これにより,腱に作用する張力を定量的にかつ精密に増大させることができた.このウサギをケージ内で2週間飼育した後屠殺し,大腿骨-膝蓋腱-脛骨複合体を取り出し,引張試験を行った.最大200Nの繰り返し負荷を膝蓋腱に作用させても,直後の引張強度は変化しなかったが,最大250Nの繰り返し負荷を膝蓋腱に作用させるとその引張強度はわずかな繰り返し数で低下した.また,繰り返し負荷によって膝蓋腱の引張強度が低下しても,その後ウサギをケージ内で飼育すると,引張強度は徐々に回復し,断面積が増大することがわかった. 以上の実験結果から,膝蓋腱はある程度の力学的環境の変化に対して適応することができるが,前十字靭帯は負荷の増大に対して十分に適応できないと考えられる.
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