Research Abstract |
主にZrO_2に種々の3d元素の酸化物を添加した系を対象とし,融液超急冷体の構成相や微構造,熱的安全性などが,添加量や急冷条件によってどのように変化するかについて検討した. 添加元素としてMn,Fe,Co,Niの酸化物を加えた系では,いずれも正方晶ないしは立方晶のZrO_2系固溶体(いわゆる安定化ZrO_2)が生成した.均一な固溶体が得られる組成範囲は,元素により若干の違いはあるが,約5〜15mo1%であった.固溶域内では組成と格子定数の間に直線関係が成立することから,3d元素イオンがZrを置換固溶していると考えられる.また,MnとFeを添加した系では,急冷体合成時の雰囲気の酸素分圧を変化させることで添加元素イオンの価数が変化することをTG‐DTAおよびESCAによって確認した.この価数変化にともなって,固溶体の結晶構造と格子定数にも変化が認められた.一方,Tiを添加した系では,酸素雰囲気中では安定化ZrO_2は得られなかったが,Ar流通下で合成した急冷体では正方晶の固溶体が生成した.この試料中ではTiの一部が3価となっていることが,やはりTG‐DTAおよびESCAによって確認され,この価数変化に伴う酸素欠陥の導入が正方晶固溶体の生成に寄与しているものと考えられた. 以上のように本年度の研究では,融液超急冷法を用いることによって,種々の3d元素イオンを,通常見られない酸素イオンの8配位位置に導入するとともに,その価数も制御できることが明らかになった.さらに,得られた急冷体を種々の雰囲気で熱処理した試料をSEM観察した結果,固溶していた3d元素の酸化物が,さまざまな形態で粒界や表面に析出することがわかった.これらの試料の機能性発現については,現在評価を行っている.
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