Research Abstract |
森林土壌の窒素無機化量の推定を行うために、スギ・ヒノキ林の土壌を採取し、20,25,30℃の3段階の温度で培養した。窒素無機化過程を反応速度モデル式化し、3つの特性値(可分解性窒素量、反応速度定数、見かけの活性化エネルギー)を得た。その結果、幼齢林、斜面上部より下部、土壌下層より表層といった、土壌有機物の多い場所で無機態窒素供給の量・速度が大で、温度変動に安定的であることがわかった。また、土壌の全窒素と可分解性窒素量には正の相関があった。本研究の森林土壌では、特性値間の相関も認められた。モデル式に地温をあてはめて推定した年間の無機態窒素量は、どの場所も表層で著しく多かった。深さ0〜10cmのha当たりの年間窒素無機化量は、壮齢林の斜面下部で146kg、上部で120kg、幼齢林の斜面下部で83kg、上部で54kgと推定された。 また、窒素無機化過程が土壌含水率およびpHの違いによってどの様な影響を受けるかを、反応速度論によって解析した。土壌含水率は、最大溶水量の40,60,80%(含水率40,60,80%)に調節した。含水率60%の土壌では、pHを調節するためにCaCO_3を0,600,1800mg・100g0,600,1800mg・100g^<-1>施用した。培養温度は前回同様3温度で行った。培養土壌は、NO_3-N量の増加にともないpH(H_2O)が低下した。硝化抑制作用が、pHの低下した土壌で現れたが、CaCO_3施用でpHの上昇した土壌では見られなかった。硝化抑制は、温度が高いほど、含水率が低いほど顕著であった。含水率40%の窒素無機化曲線は、乾土効果によって易分解性窒素が増大し他処理と著しく異なった。含水率60%と80%およびCaCO_3施用と無施用とでは、硝化抑制の有無に係わらず窒素無機化曲線に著しい違いがなかった。以上の事から、in vitro培養では、著しい乾燥に注意を要する。培養の際のpH調節は、特に必要がないと結論された。また、反応速度論を用いての現実林地の土壌窒素無機化量の測定においても、土壌含水率やpHをあまり考慮する必要はない。
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