Research Abstract |
目的と意義:パラミクソウイルス属ウイルスの赤血球凝集・ノイラミニダーゼ(HN)糖蛋白に共通に保存されているアミノ酸配列"NRKSCS"は、ウイルスの生存にとって必須な領域であると考えられている。研究者は、この領域に部位特異的変異を導入したセンダイウイルスHN蛋白を遺伝的cDNAから効率的に発現することにより、他のウイルス構成成分の影響を排して、HN蛋白の構造と機能に対するこの配列の関連性の解析を試みた。 材料と方法:部位特異的変異導入法により、cDNAの目的とする領域周囲にユニークな制限酵素認識配列を作り、これらの酵素で切断後、変異アミノ酸配列をコードする合成リンカーを挿入した。変異HNは、FuerstらのvT7法により、T7プロモーターの制御のもとにHeLa細胞で発現させた。発現した蛋白を変性HNに対する抗体で定量し、非変性HNに対する単クローン抗体を用いて抗原構造を解析した。またHA,NA能の解析も行った。 結果と考察:作出した変異HNは、QRKSCS,NQKSCS,NRQSCS,NQQSCS,NRKGCS,NRKSSS,NWKSSS,NRKSCG,IRKSCHと6アミノ残基を欠失したものの合計10種で、このうち、QRKSCS,NRQSCS,NRQGCSを除く各変異体は、二量体や四量体の形成性が認められず、非変性HNに対する単クローン抗体との反応性も欠いていた。従って本領域におけるアミノ残基の置換は、多くの場合抗原構造の大幅な変化を導き、不完全なおりたたみと共に、機能性多量体の形成を妨げるものと考えられる。一方、QRKSCSとNRKGCSでは抗原構造やHA,NA活性が野生型HN蛋白と区別できなかったが、K(リジン)における単変異体であるNRQSCSでは抗原構造とHA活性は正常であったもののNA活性はまったく検出されなかった。このことから本領域がNA活性と密接に関わっていることが判明した。
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