Research Abstract |
本年度は,民間海外援助団体(NGO)のAMDA(アジア医師連絡協議会)の協力のもと,E型肝炎の流行地であるネパールを1993年6月27日から7月18日まで訪問した.現地で患者調査を含む疫学調査を首都カトマンズ市と東ネパールのダマック市において行った. 1.患者調査 1)AMDAダマック・ヘルスセンターの1993年6月1-30日の1カ月間の外来,入院患者総数694例のうち急性肝炎患者は認められなかった. 2)アユルベ-ダ病院(カトマン-ズ市内)において1993年7月13-14日の2日間患者調査を行い,期間中9例の急性肝炎の入院患者がみられた.そのうち,8例についてE型肝炎抗体価検査(HEV-Ab,ELISA,Diagnostic Biotechnology,Singapore)を行ったところ6例が陽性であった(75%).また,これら肝炎患者すべてがカトマンズ盆地以外の地域の出身であった. 2.血清疫学調査 1)ダマック・ヘルスセンターにおける妊婦検診において妊婦より採血を行い抗体価を測定したところ,66例中1例のみHEV-Ab(+)であった(1.6%).また2)トリブバン大学付属病院(カトマンズ市内)の臨床生化学検査室の検体117例中28例がHEV-Ab(+)であった.(23.9%). 本年の調査によって,流行地のカトマンズ市内でのHEV-Ab陽性者の多くは年少時に不顕性感染し,急性E型肝炎患者の多くは非流行地であるカトマンズ以外の出身でカトマンズで感染し発病している可能性が高い. 今後,(1)E型肝炎の感染状況を明らかにするため地域別(流行地,非流行地)における年齢別のHEV-Ab陽性率を算出する.(2)E型肝炎の高死亡率群である妊婦の患者調査を行い劇症化の危険因子を解析する.(3)輸入感染症の予防の観点から,開発途上国の在留邦人のE型肝炎の感染状況に関する調査を行うことがが必要だと考えられる.
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