Research Abstract |
分子量28kDaの多型性を示すポリペプチドの遺伝性,遺伝子頻度,細胞分布などについて解析を行った.常染色体性共優性遺伝形式を示し,既知の血液型遺伝子,赤血球酸素型,血清蛋白型との遺伝てき連鎖は認められなかった.また,リンパ球,好中球,好酸球,短球にも分布していることは明らかになったが,赤血球膜には存在しなかった.このことは,1992年Humanb Heredity誌に発表した(Human Hered 42:276-279,1992). この多型性ポリペプチドの一次構造決定を目指して,ペプチドを単離精製した.精製蛋白はアミノ末端がブロックされていたため,エンドペプチダーゼ処理したペプチドフラグメントの分離を試みたが,効率よく分離することはできなかった. これとは別に,血小板膜蛋白GPIIbを欠損した血小板無力症患者を見いだしたのでGPIIb遺伝子の解析を行った.患者は,正常者ではほとんど検出されないGPIIb splicing isoform(exon 28をin-frameで欠失)だけをGPIIb mRNAとして転写していた.患者血小板にGPIIb蛋白が検出されなかったことから,このisoformは,蛋白に翻訳された後すみやかに分解され,血小板中には安定した機能性蛋白として発現され得ない分子であると考えられた.この解析結果はBlood誌に発表した(Blood 83:1017-1023). GPIIb遺伝子の解析中,GPIIb遺伝子exon 30にアミノ酸変異を伴わない1塩基置換を見いだした.この塩基置換は,GPIIbの血清学的多型として知られているBak^<a/b>システムと関連して遺伝しており,GPIIbに関連した新たな多型と考えられた.この解析結果の一部は62回日本法医学会関東地方会において発表した.
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