Research Abstract |
方法: 健常成人7名(男6女1,24-51才)を安静座位にて検査した.足関節を角度調節の可能な足底板に固定し,生理的可動範囲内の任意の角度に保持出来るようにした.関節角度は腓骨頭と腓骨外顆を結ぶ線と足底外側縁とのなす角度として測定した.Paillardによる表示に準じて110度を基準肢位とした.膝関節を120度に維持した.<刺激の定常性は,M波・H反射の閾値をチェックすることにより,確認した.> 誘発筋電図(H反射,M波)は型通り脛骨神経を膝窩部で電気刺激し(パルス幅1.0ms,頻度1/4s),ヒラメ筋より記録した. 結果: 代表例で,背屈(DF)において,Hmaxは減少し,底屈(PF)において,Hmaxはほぼ一定となっている.これは,Paillardのa型に相当する変化を示している.しかし,平行して記録したMmaxにも同様の変化がみられ,このHmaxの変化が中枢性のものとは判定出来なかった.反射性に興奮する運動単位の量をHmax/Mmax比(記録筋内のすべての運動単位が興奮した時の筋電図量に対する比率,以下H/Mmax)で表示すると,調べた角度変化の範囲内で,H/Mmaxはほぼ一定の値をとっている. 被験者全例における足関節の角度とH/Mmaxの関係をみたところ,Paillard方式によると,6人中a型-3人,b型(背屈(DF)において,Hmaxは増加し,底屈(PF)において,Hmaxは減少)-0人,c型(背屈(DF)において,Hmaxは減少し,底屈(PF)において,Hmaxは増加)-3人となっているが,H/Mmax表示によると全例においてH/Mmaxは一定傾向である.<なお,角度変化の範囲内ではH反射とM波の閾値の比は変動していなかつた.> 考察: A.肢位変化による誘発筋電図波形の変化は,被記録筋と記録電極の招待相対的位置の変化が主因であろう.筋自体の変形(短縮・伸展)による影響も考慮にいれる必要がある. B.生理的可動範囲内の足関節角度変化に対して運動ニューロンプールの興奮性に著明な変化を認めなかったが,肢位変化が筋紡錘の発射活動に変化をもたらさなかったとの可能性は,Burke等のヒトの下腿筋におけるMicroneurogram記録の結果から考え難い.静的条件下での運動ニューロンプールの興奮性を安定させている何らかの中枢性機序が働いているものと考える. 結論,今後の展開: 足関節の生理的可動範囲内の任意の角度の変化に対して,ヒラメ筋支配の運動ニューロンプールの興奮性に著明な変化を認めなかった.今後,痙性麻痺例での比較を計画中である.
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