Research Abstract |
1.研究目的: 全脳虚血症例における低体温療法は有用な治療法として期待されているが,臨床的に脳内温度を測定する方法は未だ見いだされていない.我々は直静脈洞内に試作した温度センサー付カテーテルを経静脈的に挿入することによって、脳内温度を経時的に測定し,併せて膀胱温との相関を検討した。 2.研究方法: (1)研究に先だって患者家族に本研究の主旨を説明し,同意を得た蘇生後脳症症例10例を対象とした。 (2)温度センサーをテルモ社製コアテンプに装着し,両部位の温度を持続的にモニター,記録し,脳内温度と膀胱温との相関を求めた.また,患者の意識状態と日内変動の有無についても併せて検討した。 3.研究結果: (1)5症例の内訳は,軽度障害群3例と高度障害群(いわゆる植物状態)3例,脳死群4例であった。 (2)膀胱温と脳内温度との相関係数は,軽度障害群0.886,高度障害群0.984,脳死群0.928であり,有意差がみられた。 (3)高度障害群と脳死群では日内変動はみられなかった。 以上から,脳内温度測定の有用性が確認できた。全脳虚血症例の脳温の管理が必要とされる超急性期の場合,今後は脳内温度をモニターとして低体温療法を実施するとともに,非侵襲的方法である鼓膜温との相関についても検討していきたい。
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