Research Abstract |
ぶどう膜炎におけるEpstein-Barr virus(EBV)の病因的関与の解明を目的として,以下の研究を行った。 1)ぶどう膜炎患者より得た抹梢血リンパ球のEBVに対する感受性の検討 抹梢血リンパ球にEBVを接種することでトランスフォーム細胞(1ymphoblastoid cell line:LCL)を樹立し,cell growthを揃えた後,EBVの重感染あるいは各種腫瘍プロモーターの添加によるEBV特異的抗原の発現について検討した.通常LCLにおけるEBVゲノムはlatent infection(潜伏感染)の状態であり,早期抗原(EA)やウイルスカプシド抗原(VCA)をほとんど発現していないが,EBVの重感染あるいは各種腫瘍プロモーターの添加によりウイルス産生状態すなわち1ytic infection(溶解感染)へと移行し,EAあるいはVCAを発現するようになる.今回対象とした疾患のうちEBV関連疾患(バ-キットリンパ腫,慢性活動性EBV感染症)ではEA,VCAの発現量が高値を示した.またある種のぶどう膜炎患者においても同様に高値を示す傾向が認められたが,まだ症例数が少なく疾患特異性を決定するにはいたっていない. 現在は症例を集積中である. 2)ELISA法による坑ZEBRA抗体価測定法の確立 EBVの感染がlatentな状態から1yticな状態に移行する際のスイッチ機能を有するとされるBZLF1タンパク(ZEBRAタンパク)の発現量を間接的に知ることを目的としてELISA法による血清抗体価の測定方法を確立し,ぶどう膜炎患者におけるEBVの感染動態について検討を行った.同時に従来行われているEBV特異的抗体価との比較を行い,坑ZEBRA抗体価測定の意義についても検討した.結果として,原田病やサルコイドーシスあるいは従来同定不能とされていたぶどう膜炎の一部の症例において坑ZEBRA抗体価の有意な上昇をみとめた.またそれらの結果は概ね従来の測定法によるEBV特異的抗体価にも反映されていたが,なかには坑ZEBRA抗体価のみ上昇している疾患もあり,今後のさらなる検討により坑ZEBRA抗体価の測定がEBVとぶどう膜炎との関連性を見いだす指標となる可能性が示された. 現在までの主な研究成果は以上の通りであるが,これらの成果は今後の研究の基礎となるものであり,さらに発展させていく所存である.
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