Research Abstract |
1.モルモット海馬切片標本を用い,苔状線維-CA3野のシナプスでのテラヌス刺激時による長期増強現象(LTP)に対してムスカリンレセプターサブタイプがどのように関与するか細胞外記録によって調べた。その結果,M1レセプターがLTPに対して促進的に作用するのに対して,M2レセプターはLTPを抑制することが明らかになった。このような相反的二重調節機構は外から適用したムスカリン性作動薬であるカルバコールの場合でも,内在性アセチルコリンによる調節の場合にも同様な結果であった。 2.AMPAレセプターcDNAをヒト293細胞にトランスフェクションさせ,AMPAレセプタータンパク質を発現させた。その細胞を用いてグルタミン酸による細胞応答を電気生理学的に記録することには成功したが振幅が小さい上に脱感作が著しく,グルタミン酸センサーとして用いるにはさらに改良が必要であることが判明した。 3.海馬切片に目的とする遺伝子を導入する新たな方法としてワクシニウイルスを用いる試みを行った。betaガラクトシダーゼを発現しうるワクシニウイルスベクターをモルモット海馬切片に導入することによって,数十時間以内に酵素活性がグリア細胞よりも神経細胞に特異的に現れることを見出した。今後,組織培養下にある海馬切片に目的遺伝子を導入し,シナプス前部におけるLTPの調節様式について解析を進めてゆく予定である。
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