Research Abstract |
洗浄機構に関わる要因を考える場合,界面活性剤やビルダーによる化学的作用とともに外部から被洗物に与えられる物理的作用が非常に重要である.しかし,物理的作用の代表である摩擦や折り曲げなどの機械力は,汚れ除去には有効であるが,同時に布地の損傷,劣化をもたらすことも避けられない.本研究は,この点を改善するねらいから洗浄液の持つ流体力に着目して行った実験である.透明アクリル板を用いて作成した流路(内径約500×40×1mm)内に,汚れモデルとなる径の異なる2種類のタングステンワイヤー(phi20mum,50mum)を張り,界面活性剤水溶液(4種)のせん断流を直角に当てることにより生じる抗力を,ワイヤー前後の圧力差から算出し,主に汚れの大きさが及ぼす影響を明らかにした.また,水や希薄高分子水溶液(2種)につていも測定を行い,得られた抗力を比較してそれぞれの流動上の特徴を明らかにした.これらの結果をもとに,洗浄に界面活性剤水溶液を用いることの有効性を探った.現在までに得られた結果は以下の通りである. 1.すべてのRe範囲で50mumは20mumより抗力が高く,大きい汚れほど流体力を大きく受け,除去されやすいことがわかった.また,20mumと50mumワイヤーにおける抗力の差を見ると,水,界面活性剤水溶液,希薄高分子水溶液の順に大きくなり,界面活性剤水溶液や希薄高分子水溶液は水よりもワイヤー径の影響を受けやすいことがわかった. 2.20mum,50mumとも,界面活性剤水溶液の抗力はその種類によって水より高いものと低いものがみられた.また,希薄高分子水溶液は,20mumでは水より低く,50mumでは水より高いという特異な挙動を示した. 3.得られた抗力を抗力係数として無次元化したところ,すべての条件下でReの増加とともに低下する傾向を示した.また,水の場合,20mumと50mumの抗力係数はよく連続しており,ほぼ同一直線上にプロットされたが,他の溶液は連続しなかった. 以上より,本研究で得られる流れの場合,界面活性剤水溶液が水より必ずしも汚れ除去に有効とはいえない場合があることが示唆された.今後は,この原因を探るとともに、これとは異なる流動場における実験を行い,各種溶液の特徴を明らかにしたいと考えている.
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