Research Abstract |
細胞の増殖と分化は多くの可溶性因子によって制御されている。血球系細胞は増殖にIL-3,GM-CSFなどのサイトカインが必須であり本研究者はこれらのレセプターの構造とシグナル伝達について研究を進めてきた。 血球系細胞、非血球系細胞を通じて増殖因子からDNA合成開始に到る経路を統一的に把握するための解析はこれまでに少ない。また動物細胞の複製起点は実体が不明であるがポリオーマ、SV40複製起点を用いたDNA合成開始の研究は精力的に行われてきた。本研究はこの点に着目しウイルスレプリコンを用いた増殖因子によるDNA合成開始機構の解析を目的とした。まずポリオーマレプリコンが血球系細胞内でGM-CSF依存性に、またヘリケースであるT抗原依存性に複製することを確認した。ポリオーマウイルスのDNA合成、遺伝子発現にはエンハンサーを必要とするがIL-3,GM-CSF依存性の複製、遺伝子発現両者にets蛋白が相互作用すると予想される領域が必要であることが明らかになった。一方でIL-3,GM-CSFのレセプターからはレセプターの細胞内部分欠失変異体およびチロシンキナーゼインヒビターを用いた解析から、fos,junの発現に必要な領域、増殖に必要な領域が異にした複数のシグナルが存在することを明らかにした。このレセプター変異体を用いポリオーマの遺伝子発現、複数に必要なレセプター領域が異なることを明らかにした。以上のように、血球系細胞でのポリオーマウイルスの導入に成功し、さらにIL-3,GM-CSFによるポリオーマウイルスレプリコンの複製にはets領域が必要であるが遺伝子発現と複製に異なるシグナルにより制御されていることが明らかになった。
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