Research Abstract |
ウンシュウミカン,バレンシアオレンジ,リスボンレモンを用いて,カロテノイド含量・組成とカロテノイドの分解に関わるcarotenoid cleavage dioxygenase遺伝子(CitCCD1,CitNCED2,CitNCED3)との関係を調査した。ウンシュウミカンの果皮とバレンシアオレンジの果皮と果肉では,CitNCED2の遺伝子発現が低く推移し,その基質である9-cis-ビオラキサンチン(9C-vio)はあまり分解されず,高レベルに蓄積した。一方,ウンシュウミカンの果肉とリスボンレモンの果皮と果肉では,CitNCED2の遺伝子発現が高く推移し,9C-vioは分解され,低レベルであった。以上の結果から,CitNCED2の遺伝子発現は,9c-vio含量に影響し,カンキツ果実のカロテノイド含量・組成の品種間差に関与していることが明らかとなった。 β-クリプトキサンチン(β-cry)高含有カンキツ品種‘たまみ'のβ-cryの蓄積機構を,‘たまみ'と親品種の‘清見',‘ウィルキング'を比較することにより調査した。‘たまみ'は,主にβ-cryを蓄積した。‘清見'は,‘たまみ'より低レベルのβ-cryを蓄積した。‘ウィルキング'は,主に9c-vioを蓄積した。3品種いずれも急速にカロテノイドを蓄積する時期に,カロテノイド生合成遺伝子の一斉上昇が認められた。また,3品種いずれもcarotenoid cleavage dioxygenaseの遺伝子発現の増大が認められた。‘たまみ'は,‘ウィルキング'と比較して,上流遺伝子(CitPSY,CitPDS,CitZDS,CitLCYb)の発現が高く,下流遺伝子(CitHYb,CitZEP)の発現が低く推移した。以上の結果から,‘たまみ'は,ウンシュウミカンと同様のメカニズムによりβ-cryを蓄積したと考えられた。
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