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¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,900,000)
Fiscal Year 1994: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,900,000)
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Research Abstract |
本研究は,生体組織の力学的適応現象を解明するための最適な研究対象のひとつとして,歯科矯正における歯槽骨の適応変形に着目し,まず,歯科矯正の基本量と考えられる単位応力当たりの歯槽骨吸収速度を,歯の移動量の臨床計測と有限要素法を用いた応力解析から推定した.次に,骨吸収の担い手である破格細胞の出現部位を,実験的歯科矯正を施したネコ歯根部の組織切片で観察するとともに,その有限要素法解析を行って,よりミクロなレベルでの応力と破格細胞出現部位の因果関係を調べた.本研究により,以下の成果を得た. 1.歯槽骨適応変形に関する計測法として,患者実測データを基に歯根部位における歯槽骨吸収量と応力分布を推定する手法を考案し,本手法によりヒト上顎犬歯(13例)を対象に単位応力当たりの適応変形速度を求めた.個人差はあるものの主応力と歯槽骨吸収量はよい相関を示し,0.96±0.33μm/kPa・dayという推定値を得ることができた. 2.実験動物(ネコ)の犬歯に初期荷重100〜200gを与え,1〜2週間の牽引の後,歯根組織切片を作成して,破骨細胞の出現部位を観察した.次に,各切片の歯根部形状に基づき切片別の有限要素モデルを作成し,応力分布の解析結果を細胞分布の観察結果と比較した.主応力と細胞分布の間には明確な対応関係が見られ,しかも個体や実験条件が異なるにも拘らず,破骨細胞は限られた応力範囲で出現することが明らかになった.この結果は,応力と破骨細胞出現の因果関係を明確に実証したもので,至適矯正力や骨の力学的適応現象を解析する上で,極めて有用な知見と考えられる.ただし,応力のレベルに関しては,破骨細胞が歯根膜内で血液から誘導されると考えるならば,過大であり,歯根膜物性値の実測に加え,破骨細胞誘導経路などの解明が今後の課題として残された.
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