Research Abstract |
本研究では,脊椎分離症の発症原因を力学的観点から解明するため,第3腰椎下部,第4・第5腰椎,仙骨・腸骨上部,各椎体間の椎間円板,前縦靱帯,後縦靱帯,横突間靱帯,棘間靱帯,棘上靱帯,腸腰靱帯を取り入れた有限要素モデルを作成した.第4・第5腰椎の部分は皮質骨,海綿骨からなる椎体と後方要素の部分に分け,椎間円板は2層の線維輪と髄核および骨性終盤と軟骨性終盤からなるものとしてモデル化した.各靱帯は引張り荷重のみを受持つ線形弾性トラス要素で構築した.以上の要素に加え,剛体で近似した第3腰椎下部や,不動点で近似した仙骨及び腸骨上部を組み込み,最終的な有限要素モデルを構築した. 下位腰椎部が受ける代表的な拘束を再現するため,不動椎である仙骨の椎体上部と上関節面上の軟骨表面を完全拘束した.さらに,約500Nあるいは1000Nの垂直荷重を第3腰椎の椎体上部に作用させ,その上で伸展・屈曲運動の場合には,第3腰椎棘突起先端に伸展・屈曲力を作用させ,回旋運動では回旋モーメントを加えた.また回旋運動においては,旋回軸の位置の影響を検討するために,回旋の中心に脊柱管中心,椎体後端3分の1,椎体中心を選んで解析を行った.その結果,垂直荷重だけの場合と伸展運動では第4・第5腰椎ともに関節突起間部の内側に,屈曲運動では第4・第5腰椎ともに関節突起間部の後側に,回旋運動では第4・第5腰椎ともに引張り側の椎弓根付根部に広範囲にわたる応力集中が見られた.伸展運動の場合,脊椎分離症の発生率がより高い第5腰椎の関節突起間部に第4腰椎に比べ大きな応力が発生することが明らかになった.回旋運動においては第4腰椎の方が高い応力が発生し,また回旋軸の位置の影響はそれほど大きくなかった.他方屈曲の場合には,比較的大きな応力集中が見られるものの,第5腰椎と第4腰椎とではほぼ同じ関係が得られた.
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