Project/Area Number |
06219217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 幹人 京都大学, 理学部, 助手 (70197896)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1994: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | カオス / 遷移状態 / クラスター / 少数多体系 / ファン・デル・ワールス錯体 |
Research Abstract |
化学反応論において、反応経路を特定し遷移状態を特徴付ける問題は重要である。反応経路が1次元的な場合には、ポテンシャル面の鞍点、あるいはポテンシャル面を分ける不安定周期軌道をもって遷移状態とする(MillerあるいはTruhlerらによる)。しかしこの方法は、いわゆるre-crossingという欠点を持っている他に、次元の高い反応経路を持つ場合に拡張できないという難点がある。最近DavisとGrayらは、セパラトリックスをもって遷移状態とする理論を提案している。彼らが提案した方法は、力学系カオスに関する近年の研究成果を用いたものであり、(1)re-crossing問題が無い、(2)次元の高い系にも拡張が可能である、等の利点がある。しかし、次元の高い系への拡張に関しては万能ではない。GillianとEzraは、ファンデルワールス力によるクラスターであるHe-I_2に対してDavisらの方法を適用しようとし、セパラトリックスが存在しない(homoclinic tangency)という現象に出会っている。 homoclinic tangencyという現象は、性質の異なるカオス間の転移を引き起こすということが、力学系カオスの研究で知られている(Grebogi,Ottらはこれをcrisisと名付けた)。本研究では、He-I_2におけるhomoclinic tangencyが、bendingを伴わないカオスから、bendingが励起される次元の高いカオスへの転移を引き起こしていることを見い出した。これから、より次元の高い反応経路を経る反応過程では、統計的な性質の異なるカオスを通過した反応生成物が混在している可能性があることがわかる。これらをどのように分別するかという問題は、精度の高いポテンシャル面の確定・反応過程の特定、さらに反応の制御など今後の化学反応論にとって重要である。なお、以上の研究は古典論であり、量子論においてこのcrisisがどう対応するかという問題はこれからの課題である。
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