Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
多価イオンは空の束縛準位と大きい静電ポテンシャルを持っており、固体表面との相互作用により多くの特異な効果が期待できる。本研究では多価イオンと固体との相互作用による多価イオンの電荷移行過程を調べた。特にモリブデン及びタンタル表面への酸素多価イオン入射によるX線放出スペクトル及び放出収率の測定を行った。その結果Moターゲットに入射した酸素多価イオンによるX線放出スペクトルには200eV及び520eV付近に主要なスペクトルがみられ、Taターゲットに対しては170eV及び520eV付近に主要なピークがみられた。このうち520eVピークはO-KL(525eV)と同定した。このO-KL過程によるX線放出収率は、ターゲットの種類にほとんどよらない結果を得た。また酸素イオンの2価から7価に対するO-KLX線放出の価数依存性では、2価から5価まではO-KL放出収率はほとんど価数によらず一定であり6価および7価において大きく増大している。特に7価では5価の10^3程度の増大がみられた。この放出収率の増大は7価イオンがK殻に空準位を持つためと考えられる。また6価における約50倍程度の収率の増大は主にK殻に空準位を持つ準安定イオンが含まれているためと考えられる。7価イオンに対するO-KL放出収率の異常な増大は金属ターゲットからOのL殻への電荷移行が主に起きており、それによってL殻からK殻への遷移が主として見られるためと考えられる。Moターゲットからの200eV付近のピークはMo-M_<4,5>N_<2,3>-M_<4,5>N_<4,5>,-M_1M_5などの遷移によるものと同定した。このうちM_<4,5>準位への遷移による放出収率の価数依存性は5価から7価に於て10倍程度の増大しか見られなかったのに対し、M_1への遷移に対応する放出収率は5価に対して7価では約10^3の増大があり、この価数依存性はほとんどO-KLの価数依存性と相似である。このことはMoのM^1準位から酸素のK準位への電荷移行によりM^1準位が生成されたためか、あるいはO-KL過程に伴うM^1準位からのオージェ電子放出によるM^1の空準位生成によるものと考えられる。以上のように本実験から多価イオンと固体表面との相互作用による多価イオンへの電荷移行過程に関する新しい知見が得られた。
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