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¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
本研究では超音速ジェット中で生成する分子クラスターの高感度振動分光法を開発し,その構造を決定するとともにクラスター中の特定のサイトの分子からの振動緩和を測定した。対象とした分子クラスターはベンゼンvan der Waalsクラスターやフェノール水素結合クラスターである。本研究は(1)高感度振動分光法の開発,(2)分子クラスターの振動分光による構造決定,および(3)クラスター中の特定のサイトの分子の振動励起と緩和の観測とから構成される。 開発した高感度振動分光法は,誘導Raman-紫外二重共鳴分光法および赤外-紫外二重共鳴分光法である。ベンゼンクラスターでは二量体を中心に研究を行ない,誘導Raman-紫外二重共鳴分光法を用い,二量体がT-型構造であることが分かった。さらにT-型二量体のそれぞれのサイトのベンゼンのモード1準位(992cm^<-1>)を励起し緩和を観測したところ,サイトの違いは見られず35ナノ秒の寿命で減衰することが分かった。この結果はベンゼンやナフタレン結晶中での振動緩和の研究に対する基本的なデータであると考えられる。一方フェノール水素結合クラスターでは,フェノール-(H_2O)_n水素結合体およびフェノール多量体のOH伸縮振動を赤外・紫外二重共鳴分光法により観測することに成功した。さらに測定した赤外スペクトルから構造を決定し,これまで溶液で研究されてきた振動スペクトルの溶媒効果を分子レベルで説明できることを示した。このOH伸縮振動の直接観測の成功によりこれまで困難とされてきた水素結合クラスターの幾何構造が解明されるだけでなく,また本研究で得られる結果は液体の局所構造,溶質-溶媒相互作用,また反応の分子レベルでの解明に大きな貢献をすることが期待される。
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