Research Abstract |
本年度は,少数キャリアー物質CePおよびYb_4As_3の研究を中心に,以下のように大きな成果をあげることができた: 1.CeP 昨年度までの我々のCePに対する中性子散乱による研究の結果,磁場下において極めて特異な磁気構造が発見され,我々は,これを少数キャリアー系に本質的な現象,即ち,磁気ポーラロン格子の生成によるものと提唱してきた.本年度単結晶を用いた高圧下の中性子散乱の実験を行った結果,磁場下と同様の磁気構造が圧力下においても生じていることを見いだした.また磁場下においてもさらに詳しい研究を行った結果,これまで一部不明であった高磁場領域における磁気構造を決定し,またこれらの磁気構造の温度変化を明らかにすることができた.さらに,精密な中性子非弾性散乱の研究を行った結果,CePの励起スペクトルに,異なる2種類の基底状態を持ったCeイオンが存在していることを示すスペクトルの異常が見いだされた.いずれの実験結果も,上記の磁気ポーラロンモデルを強く支持するものであった. 2.Yb_4As_3 これまでの我々の多結晶による中性子非弾性散乱の研究の結果,Yb_4As_3の磁気励起スペクトルにおいて,この物質のヘビーフェルミオン的異常と関連すると思われる,異常なレスポンスが,2ないし4meVの低エネルギー領域に見いだされていたが,本年度はさらに,単結晶試料を用いた非弾性散乱の研究を行い,このレスポンスが,スピン波のような,強い分散を持ったものであることを,明らかにした.この結果は,この物質の異常が,20Kないし30Kの高温まで存在する,反強磁性的短距離秩序と深い関連があることを示している. 3.その他の物質 CeRhSbおよびYbPに対する中性子非弾性散乱の研究を行い,前者については,この物質の半導体的近藤効果に対応すると思われる,磁気励起のギャップを見いだし,後者については,近藤効果的な比熱の異常に対応する低エネルギ励起の異常(反強磁性的短距離秩序と思われる)を見いだした.
|