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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
血清飢餓や接触阻止により増殖サイクルを離脱した細胞は,血清や細胞増殖因子で刺激すると速やかに前初期遺伝子群を発現し細胞複製を再開する。前初期遺伝子産物のなかでFosおよびJunファミリーの蛋白質は,癌原性を有し細胞複製の制御に重要な役割を担っていると考えられる。我々は,Fos,Junによる細胞複製の制御メカニズムを明らかにする目的でこれらのタンパク質をエストロジェンレセプターとの融合タンパク質として発現するRat-1A由来の細胞株を樹立し,それぞれの機能をエストロジェンでコントロールできるシステムを確立した。このシステムを用いてFosファミリー蛋白質のなかでΔFosBが無血清培地中で休止期に同調された細胞にDNA複製,細胞分裂を誘発する最も強い能力を持つことを発見した。細胞複製の開始は転写活性化能をもつFosBよりも転写活性化能を欠くΔFosBによってより効率よく誘発されることから、細胞複製の開始にはFosBのC-末端に存在する転写活性化ドメインは必須ではなく、ΔFosBの持つN-末端領域だけで十分であることが結論された。我々は,ΔFosBの下流で発現が制御される遺伝子を探索し,その制御機構を明らかにすることで核に到達した増殖シグナルがいかに伝えられるかを明かにできると考え、平成6年度は,(1)ΔFosBの発現に依存して細胞増殖が開始する際の細胞周期制御遺伝子群(サイクリン,サイクリン依存性キナーゼ)のmRNA発現をノーザンブロッッテイングにより解析した。その結果,ΔFosBの発現によりG1/S期の移行期にサイクリンEとそのパートナーCDK2の発現が増加することを見いだした。(2)サイクリンEとCDK2の転写をNuclear Run Onアッセイにより解析したところ,この2つの遺伝子は休止期ですでに転写されており,ΔFosBの発現によってその転写レベルは増加しなかった。(3)サイクリンEとCDK2のmRNAの分解速度を解析したところ,ともに休止期では速やかに分解されたが,ΔFosBの発現により,G1/S期に移行した細胞では,分解速度が低下し,安定化されていることが確認された。以上から,ΔFosBはサイクリンEとCdk2のmRNAを安定化することによりこれらの産物の細胞内量を増加させ,細胞周期の進行を促進的に制御すると考えられる。
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