Project/Area Number |
06259202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
檜山 哲夫 埼玉大学, 理学部, 教授 (20125892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲本 準 埼玉大学, 理学部, 講師 (30192678)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 1994: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Keywords | 熱ショック蛋白質 / HSP60 / ランソウ / 好熱性生物 / 高温耐性 / GroEL / シヤペロニン / 光合成生物 |
Research Abstract |
熱ショック蛋白質は熱ショックなどによってその発現が誘導されるストレスタンパク質である。また分子シャペロンとしてタンパク質間の集合や解離を介添する一群のタンパク質でもあり、耐熱性との関係が注目される。本研究は高温に生育する好熱性ランソウに存在する熱ショックタンパク質について、耐熱性獲得の機構を分子遺伝学的及びタンパク化学的に解析しその耐熱機構を解明することを目的とする。我々は最近、常温よりはるかに高い温度に生育する好熱性ランソウでも、更に高い温度に曝すといくつかの熱ショックタンパク質が顕著に増加することを見出した。また63kDaのシャペロニンと相同性の高い蛋白を発現すると考えられる遺伝子(groEL2と命名)をクローニングし塩基配列を明らかにした。この遺伝子産物とは異なるアミノ酸配列をもつ別の63kDaポリペプチドが熱ショックにより蓄積することが分った。本研究の目的は、(1)この蛋白(GroEL1)に対応する遺伝子(groEL1)をクローニングし塩基配列を明らかにすること、(2)これら二つのシャペロニン遺伝子について、転写産物の解析と転写調節の機構を明らかにすることと、(3)発現蛋白(GroEL1及びGroEL2)の単離と性質の解析を行うことである。 好熱性ランソウとして温泉由来のSynechococcus vulcanusを用い、55℃で培養した。熱ショックは63℃の培地に移して行った。groEL1のクローニングは以下の様に行った。まず63kDaポリペプチド(GroEL1)のN末端及びリジルエンドペプチダーゼ処理後に得られたペプチド断片のアミノ酸配列を調べそれに従ってオリゴヌクレオチドを設計し合成した。これらをプライマーにし、染色体DNAを鋳型にして、PCR法により産物を得た。塩基配列はSanger法で調べた。転写調節と産物の解析は、核酸画分を熱フェノール法により調製し、ホルムアルデヒド・アガロース電気泳動後、groEL1及びgroEL2遺伝子断片をマルチプライム法で^<32>P標識してこれをプローブとして用いたノーザンハイブリダイゼーションにより行った。蛋白の分離精製は疎水クロマト、イオン交換クロマトの他、抗体を作成し、アフィニティカラムを作って用いた。 前年までにPCR法により約540bpの産物を得、塩基配列を調べたところ、熱ショック蛋白GroEL1由来のペプチド断
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片のアミノ酸配列と一致することからこのPCR産物は63kDaポリペプチドの遺伝子(groEL1)の一部と考え、本研究では、ショットガン・クローニング及びプラークハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリのスクリーニングを行って、この遺伝子及び周辺のDNAのクローニングを行った。その結果、この遺伝子及びその上流、下流域を含むDNA断片を単離して全構造を解明することが出来た。さらに上流域には、groES遺伝子が見いだされた。さらにこれらの遺伝子はオペロン構造をとっていることが分った。塩基配列から推定したアミノ酸配列は既にSherman等によって報告されている常温性ランソウSynechococcus sp.PCC7942のgroEL及びgroES遺伝子のそれと非常に相同性が高いことが分った。 前年度までにgroEL2遺伝子の転写産物(約1.8kbpのモノシストロニックmRNA)は、熱ショック後、約6倍に増加すること、groEL1の転写産物(約2.3kbp)は63℃、15分間の熱ショックで強く誘導され、その転写量は約7倍に増加することが分ったが、本研究では、温度について詳細に検討したところ、45℃と50℃ではほとんど発現量に差がなかったが、通常培養に用いている55℃では明らかに発現量の増加が見られることが分った。このことはこの菌の生育速度が50℃から63℃まで殆ど変わらないことと考えあわせると、熱によるストレスは既に55℃でかかり始めることを示唆する。 熱ショックをかけて大量にGroEL1蛋白を合成させた菌体から得た可溶性画分をブチルトヨパールカラムで分画すると、HSP10(GroES)を伴う画分と、GroELのみの単一バンドを示す部分とに分れた。この単一バンドの標品をウサギに注射して、抗血清を得た。またこの精製の過程で、GroELを特異的に分解するプロテアーゼ活性が可溶性画分に存在することを見いだした。この酵素の性質や単離について現在検討中である。 これまで熱ショックで誘導される蛋白は、この菌でそのほか4種類ほど検知されている。そのうちN末端アミノ酸配列をデータベースで検索したDnak(HSP70)と高い相同性をもつものについては、熱耐性と特に強い関係が予想されるが、発現量が少なく定量が難しかったので、ATPアフィニティカラムを用いて濃縮精製を行い抗体作製を試みた。良質の抗体が得られたので現在これを用いて温度ストレスと発現の量的関係を検討中である。また精製の目的でアフィニティカラムも作製し、現在条件検討を行っている。 groELSオペロンの配列の比較からもここで用いている好熱菌Synechococcus vulcanusは、常温菌Synechococcus PCC7942と近縁と思われ両者の比較を現在進めている。 Less
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