Research Abstract |
本研究では,東アジア地域の諸都市における都市代謝システムの把握,その動態的特性の分析,都市環境改善のための制御手法の検討を行った。中国の大連市,潘陽市,上海市,韓国の仁川市,浦項市を対象とする。また,国内では北九州市を取り上げ,日本の産業型公害克服の事例として設定した。以下,本年度の概要を示す。 (1)都市代謝システム基本フレームの設定 都市代謝システムを比較検討するための基本フレームを,既存文献を参考に設定した。都市環境を比較する際には,(1)都市の特性(社会,産業,経済,エネルギー等の条件),(2)環境現況,(3)環境対策等を明かにしなければならない。これらの関係は時間的に一定ではなく,環境変化や環境影響,環境問題に対する評価等を受けて,制度整備や規制強化,インフラ施設整備等へフィードバックが作用する。 (2)対象都市の社会・環境データの収集 対象各都市の社会,産業,経済,エネルギー,市民生活,そして環境現況,環境対策に関する各種資料を収集した。これらを体系的に整理し,工業化による経済発展の経過ならびに環境悪化の現状の把握を行った。上海市や潘陽市における社会総生産額の変化を見ると,1984年以降の生産額の伸びが顕著である。また,中国各都市では,経済発展とともに電力消費量や給水量等も増加している。 国レベルでの環境対策 都市レベルでの環境対策を比較する前に,国レベルでのものを検討した。日本では,国の方針にしたがって地方行政及び企業での環境対策が行われている。韓国では,法制度の整備はかなり行われているものの,中央集権的な環境行政となっている。一方,中国では,地方(省,市)レベルでの環境行政組織も十分組織されている。しかしながら,実際の環境対策では,技術の未発達や費用不足等といった運用上の問題が多く残されている。
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