Research Abstract |
I)総合説明 本研究実施計画の申請者らは,これまで個体レベルおよび培養細胞レベルにおいて,熱ショックによる熱ショック蛋白質Heat Shock proteins(HSP)の誘導を温熱生理学的立場から検討し,報告してきたが,本申請研究課題では,マクロファージ系培養細胞を用い,免疫反応の発端となるIL-1によるHSP誘導の有無を,分子生物学的手法を用いて検討した。IL-1産生能を有するとともに熱ショックによりHSPを誘導するU937細胞(ヒト単球様組織球性リンパ腫)にリコンビナント・ヒト・IL-1を添加し,HSPの誘導の有無(1)抗HSP抗体を用いたウエスタン・ブロッティングにて,蛋白レベルで検討するとともに,(2)HSP70cDNAプローブを用いたノザン・ブロッティングにてmRNAレベルで検討した。本研究の結果は,免疫反応の発端となるIL-1と細胞内の蛋白の成合成・輸送に機能し,種々のストレスにより障害を受けた蛋白の修復をし,細胞をストレスから守るHSPとの直接の関係を明らかにするものであり,IL-1の一新作用,一つのHSP誘電因子を明らかにすることに留まらず,生体において感染,炎症,薬物,温度,低酸素,低血糖,その他もろもろの細胞に対するストレスから如何に免疫系とHSPとが連関して応答し,細胞機能,特に温度適応機序や生体内部環境恒常性を維持しているかを解明する端緒となることが期待される。 II)成果:先の環境科学会(1994.8.24.於 筑波)における温度適応の中枢・末梢性機序以降の研究成果温熱順化の形成過程における体温調節反応の低下の形成成果を報告する。 暑熱ストレス下における熱帯地住民の体温調節反応量が邦人に比して小さい事は,体温や発汗にみるhabituation phenomenonとして周知である。更に,生体において発熱や生理的高体温が42℃を超える事は稀であり,私共は暑熱順化の形成過程における体温上昇にはnegative feed back loopによる体温上昇抑制機構の存在を仮定して実験した結果、 (1)熱帯地住民は頻回に亘る発熱性疾患のIncidenceによるExogeneous Biological Agent(例:LPS)とMacrophage(Mφ)の免疫反応を介してEndogenousIL-1α・βの分泌→BBB→PGE_2→PO/AHを経て体温のEffectormechanismの駆動による高体温(発熱)の誘起があるが,高体温(発熱)自体がMφの増殖抑制,MφからのIL-1α・βの分泌抑制といった実験結果からnegative feed back systemが成立する。 (2)更に,高体温(発熱)がMφの細胞内で熱ショック蛋白(HSP)を誘導する過程GでHeat Shock Tran-scription Factor (HSF)がIL-1α・βのgene sequenceの各部で配列を同じくするので競合する現象もあり,結果としてIL-1α・βの分泌を抑制するnegative feed back loopが成立し,体温上昇の抑制を示唆する結果を得ている。
|