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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
哺乳動物の中枢神経伝導路は、いったん形成された後は壊れることはあっても再生することはなく、ましてや神経要素を取り替えたり補充したりして神経回路網を修復することは不可能と考えられてきた.しかし,それは本当ではない.本研究は哺乳動物の中枢神経系が潜在的には著明な再生と自己組織化の能力を有し,それを顕在化させれば神経回路網をシステムとして再構築することが可能であることを以下の実験により明らかにした.新生ラットの脊髄を下部胸髄のレベルで1.5〜2髄節切除し,その空隙に胎児ラットの相同部位を含む脊髄髄節を移植した.移植髄節は,切除した髄節と等長になるように摘出し,実験群ではそれを正常な方向に向けて移植し,対照群では吻尾方向や背腹方向を逆転して移植し,あるいは大脳皮質,小脳,末梢神経を移植したり,空隙に何も移植するとこなくそのまま放置した.実験群では移植片は宿主の脊髄断端をつないで,一つの連続した脊髄を形勢していた.形態学的,電気生理学的検索により,これらの動物では移植髄節を越えて上位脳と腰膨大の間に正常なものと区別し難い強力な神経結合ができていることが判明した.これらの動物は,また,ほとんど正常な上下肢の協調運動を示した.一方,対照群でも上位脳と腰膨大の間に神経結合は形成されたが,それは量的にも距離的にも実験群とは比較にならない程僅かであったし,それらの動物の上下肢の協調性は乏しく,その神経症状は髄節切除後何も移植しなかった例と比較して大差はなかった.本研究結果は脊髄髄節の切除によって失われた上行性・下行性脊髄伝導路が胎児の相同組織の相同部位への移植により再構築されること,そして,その再構築された神経回路が個体にとって機能的意義を有するものであることを示している.
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