ミトコンドリアDNAゲノムの構造変化を指標とした後生動物の系統解析
Project/Area Number |
06273206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上島 励 筑波大学, 生物科学系, 助手 (20241771)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1994: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 遺伝子配置 / 分子進化 / 系統解析 / 後生動物 / 軟体動物 |
Research Abstract |
本年度は、脊椎動物と軟体動物に対象を絞ってミトコンドリアDNA(mtDNA)ゲノムの研究を行った。(1)現生の脊椎動物では最も原子的な体制を持つヤツメウナギのmtDNAをクローン化し、その遺伝子配置および遺伝暗号を決定した。その結果、ヤツメウナギの遺伝暗号および遺伝子配置は硬骨魚以降の高等な脊椎動物とほとんど同じであることが分かった。従って、脊椎動物において遺伝子配置および遺伝暗号は安定した特徴であり、高次分類群の系統解析に有効な分子マーカーであることが確認された。(2)これまでに遺伝子配置が報告された2種の軟体動物は、同じ動物門でありながら、遺伝子配置が著しく異なっており、しかも他の動物門の配置とはいずれも全く似ていないことが知られていた。そこで、3綱4亜綱に属する軟体動物のmtDNAの遺伝子配置を新たに決定し、既に報告されている2種の軟体動物と遺伝子配置を比較した。その結果、(1)アワビとビザラガイを除くと、残りの軟体動物は全て遺伝子配置が著しく異なること、(2)動物門内のみならず綱の中でも遺伝子配置が著しく異なることが分かった。しかし、この異常な多様性を詳細に解析すると、多板類や原子腹足類では、原子的なmtDNAの遺伝子配置を原型のまま残しているのに対し、多くの軟体動物では遺伝子配置の変化の速度が著しく速く進化しているため、特殊な遺伝子配置に変化してしまっていることが分かった。このことは、2つの系統学的な意義を持っている。第一に、同じ綱の中で遺伝子配置に著しい変化があるので、mtDNAの遺伝子配置は綱内の上位分類群の系統解析に有効なマーカーとなる。第2に、軟体動物の原始的なmtDNAの遺伝子配置は、前口動物群、特に節足動物に極めて似ており、この2つの動物門が近縁であることを示唆している。このように、軟体動物では、mtDNAの遺伝子配置が著しく多様で、その配置の変化は様々なレベルの系統解析に使えると考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)