Research Abstract |
近年の分子生物学の進歩により、新たなサイトカインが次々とクローニングされその生物学的な意義が明らかにされつつある。従来紫外線や化学物質、細菌などに対して受動的な防御機構のみに関与すると考えられていた皮膚組織が多様な生理活性物質を産生する巨大な臓器であることが明らかにされた。このような観点より、皮膚疾患においては様々なサイトカインが病変形成に関与していると考えられており、その制御により、皮膚疾患の根本的治療も可能と考えられる。本年度は炎症反応時における皮膚でのサイトカインの動態を明らかにする目的でヒト皮膚器官培養系を樹立し、TNCBなどの皮膚感作性物質、レチノイン酸、ラウリル硫酸などの皮膚刺激性物質、ブドウ球菌由来スーパー抗原などを用い、経時的に皮膚より産生されるサイトカイン、細胞接着因子を抗サイトカイン、細胞接着因子抗体、In situ hybridizationによりその局在を、RT-PCR法によりmRNAの発現を検討した。今回得られた成果としてスーパー抗原や、TNCBなどの皮膚感作性物質の添加により、ケラチノサイトより1時間以内の早期にTNF-α,IL1などの発現が見られ、漸次ICAM-1、VCAM-1などの細胞接着因子がケラチノサイト、血管内皮細胞などに発現してくることを明らかになった。Enk等はTNCB塗布マウスを用い同様の実験を行なっているが、彼等の系では、一次刺激性物質ではTNFα,IFNγ,GMCSFが、感作性物質では上記に加え、IL1α,IL1β,MIP-2,IP10などが誘導されることが報告されている。器官培養と動物の差があるが、我々の系ではより、皮膚に限局したサイトカインメッセージの発現を検討することが可能であり現在、FK506,活性型ビタミンD3などのImmunomodulatorを用いた制御機構の検討を行ない、細胞接着因子の発現抑制を誘導することが可能であった。今後この抑制に関与するケラチノサイトにおけるシグナル、転写因子の阻害機序を検討する予定である。
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