Project/Area Number |
06610316
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Japanese history
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
宮島 敬一 佐賀大学, 教養部, 教授 (90174185)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Keywords | 地方有力寺社 / 祭礼・神事 / 地域社会 / 造営奉加札 / 起請文 / 政治性・象徴性 |
Research Abstract |
この研究の目的は、地域社会を視点として、中世後期社会における地方有力寺社の歴史的社会的存在意義を考察することにあった。そのために、(a)地方有力寺社の実態、(b)地域社会の構成および諸社会集団(領主・村落・寺社)の実態、(c)それらの相互関連から、地域社会における地方有力寺社の存在意義(機能と役割)を解明することにした。そこで、まず第1に、近江国甲賀郡の油日神社を取り上げた。甲賀郡中惣の惣社とされるが、ここで明応4年の「造営奉加札」と祭礼〔頭殿祭〕を中心に分析した。同社に結集する地域社会の範囲および諸社会集団(領主〔殿・方〕・村落・村落寺社・庵・職人・女性)を特定し、さらに祭礼・奉加が、象徴性と可視性とをもって、「参加と公開」・「序列(差別)と順不同(平等)」・「開放と閉鎖」という両義性あるいは二面性を提示すること、それゆえ地方寺社が、地域社会における階級的「対立」を止揚して、地域に「共存」するための「地域の論理」を形成する「公」の場となっていることを指摘できた。第2に、多賀大社や安治区有の文書を中心に、村落から戦国大名にいたるそれぞれの「正当性・正統性」が、地域の祭礼や神事の催行・維持を基底にしていること、また祭礼の共通性・同事性によって保障されていることを解明した。第3に、肥前の起請文の考察から、氏神・地域神(村落・荘園・郷・島等)・国神という重層性およびそれぞれの明確な「存在」、そしてそれが戦国大名領国の形成により「統一」されていく過程、さらにキリシタンとの比較により「神の論理性」を指摘した。第4に、地方寺社の伝承・伝説には、地域社会における過去の政治的対立(正統=異端/排除)を投影したものがあることが分かった。その歴史的意義が何かは、今後に広がる問題と考えられる。
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