Research Abstract |
中間速度域のイオン-原子衝突において、電子捕獲断面積および電子交換断面積の速度依存に認められる特有の構造の生成機構について研究した。この構造の一般的特性を知るために標的を希ガス原子からアルカリ金属原子に変えて実験を行った。加熱された炉から噴出する安定したナトリウム原子線に,1〜20keVおよび20〜300keVのエネルギーの加速器からひきだされたH^+およびHe^+のイオン線を衝突させ、励起準位に電子を捕獲した原子からの放射光を光子計数し、その準位への電子捕獲断面積を求めた。他の研究者による異なる衝突系についての結果と比較検討することにより、中間速度域における電子捕獲断面積の振る舞いと衝突速度および標的原子の軌道電子速度の間の相関を認めた。これらを説明するために衝突の前後において移行する電子の運動量が保存するモデルをつくり、計測値との定性的な一致をみた。また上記の電子移行モデルによれば、電子捕獲断面積の振る舞いに標的原子の角運動量状態にたいする依存性が現れることが予想される。通常の標的原子はS-状態にある。発振周波数安定化装置を付加した波長可変レーザーを用いて、ナトリウム原子に共鳴励起光を照射することによりNa(3p)を生成し、P-状態にある標的原子について同様の衝突実験を行った。得られた結果を解析し、電子捕獲断面積の衝突速度の変化にともなう振る舞いに標的原子の角運動量状態に対するつよい依存性を認めた。これらの成果を発表するための論文を準備しつつある。
|