Research Abstract |
平成6年10月末に本科研費の交付内定通知を受け,このため集中豪雨に関する観測には自ずと限界があった.乱泥流の発生と流動に関する一連の観測は,11月下旬より行ない,平成7年2月に終了した.この間,集中豪雨からの河川土砂流出は2度観測され,これによって研究対象の北海道オコタンペ湖では,小規模ながら乱泥流の発生と流動が認められた.同湖には計6つの河川が流入するが,うち湖中央付近へ流入する2つの川が,全土砂供給量の約65%を占める.この2つの川について,その土砂流出量を綿密に観測した.結果として,2つの川のうち北湖盆に流入する第II川は,この湖盆域にのみ乱泥流の発生を引き起こし,湖全体に対する堆積寄与は,余り大きくない.他方,湖中央に流入する最大の第III川は,湖の北湖盆と南湖盆の両者に堆積を引き起こし,湖全体への堆積寄与がかなり大きいことがわかった.この川の土砂流出に伴う乱泥流発生は,特に南湖盆で顕著で,乱泥流消滅後も吹送流による泥水の混合拡散によって,微細粒子が湖全体に堆積することがわかった. 実測例が今回は極めて少なかったため,夏〜秋季における一連の土砂流出観測と乱泥流観測が次回は不可欠となる.これによって乱泥流の発・流動・消滅過程の一連の機構をより定量的に明らかにしたい.また,今回の観測では,乱泥流と吹送流の相互作用の重要性が示唆された.吹送流やその補償流が,乱泥流の運動エネルギー散逸を促進させる挙動を示すことがわかった.これは従来提唱されてきたオコタンペ湖全体の堆積過程が,よりダイナミックな流動条件下で行われていることを意味し,この相互作用の力学について詳細に検討するつもりである.
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